俺はその昔、下関の、とある町で産まれた。
あれから30年以上が経った。
俺は下関から遠く離れたところで暮らしている。
俺には下関に帰れない理由がある。
俺は10代のころ、少数の人間に苛められていた。
その恨み憎しみが拭い去れないで、私の心の一部を支配している。
もう20年以上が経つというのに、時折、脳裏に浮かんでは
絶望的思考へと誘う。
当時の担任は、苛められるほうも悪いと教壇で語っていた。
苛め問題が深刻化され、今では、どの学校でも対策に取り組んでいるのだろう。
親は、過去に囚われすぎていると言う。
でも、帰りたくても帰れないのだ。
俺を苛めたあいつらが、のうのうと暮らしていることを思うだけで、
胸の鼓動が高鳴り張り裂けそうになる。
もし帰って、街中でもどんなところでも、偶然でも、そいつらに遭遇したら、
たとえ犯罪者になることが頭で理解してても、そいつらの命を奪うことを
躊躇うことなく実行するだろう。
あいつらが住んでいる下関。
あいつらを住まわせている下関。
その破滅的思考が、俺の精神を蝕み、俺は今、病の床にある。
俺の命も、もう永くはないだろう。
故郷であるはずの下関。
このまま、恨み憎しみを抱えたまま、この世を去らねばならぬのか。
この俺の思念が、かの地に届き、増殖し、あいつらを滅することを願おう。
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